novels:相方作うちの子小説!
※注意!
うい→幼馴染達(アズサ・ツバキ・アラシ)だけが呼ぶホムラのあだ名
アサギリとソラ→空軍のボーマンダコンビ(令和リデザイン中…)
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長い長い任務だった。1か月以上かけて行われた大捕り物もなんとか無事に終わり、ある程度の始末の目途もたち、ようやく帰宅許可が出た。
上司である体隊長のアサギリ、ではなく副隊長のナギから話を聞き、アサギリ班は一度帰宅、2日の休息を得ることとなった。
約一か月近く緊張状態を強いられ、さらにその後の処理に追われ疲労困憊だったアズサやソラにとって漸くの休みだ。普段ならお疲れ会だのとうるさいソラも、騒ぐ元気もないらしい。口数少なくそうそうに解散となった。
重たい足を動かし帰路につく。身体が重い。ここまで疲労を感じるのは久々かもしれない。時刻は深夜を回ったあたり、人気もなく暗い夜道を進んでいく。どうせこの時間なら家には誰もいないはずだ。なら多少行儀が悪くても、このまま寝てしまいたいほど疲れていた。
普段では考えられないほどだらだらとした足取りで、時間をかけて家にたどり着く。明かりはない。当然だ。もう一人の住人はこの時間仕事の真っ只中のはずだ。自分ひとりと思うとどうでもよくて、雑に上着をぬぎ首元を緩め寝室へ向かう。とにかく疲れていた。
そうして寝室に、明かりもつけずに倒れこむ。スプリングの軋む音と、ぐぇっと何かが潰れた声。……声?
「……あ?」
ベッドの中、塊がある。温もりを伴ったそれは、もぞもぞと動き、布団から顔を出した。
「……んン?なん……?おーじ……?」
塊――ういは、今にも寝ますといった顔で、何とか目を開けてアズサを見た。
「うい……お前、仕事は」
「んー……やすみぃ」
ういは眠気を払うように唸りながら、身体をアズサのほうへ動かす。ういが動くたびにほんのりと香りがする。馴染んだういの香りだ。家に帰ってきたのだと、アズサもういに釣られて眠気が襲ってくる。このまま眠ってしまおうと目を閉じかけた、その時
ういの手がアズサの顔に伸ばされて優しく触れて
「おかえりおうじー、ひさびさにあえて、うれしぃ」
ふにゃりと崩れたその顔に、堪らなくなった。
胸に生まれた衝動のままに、ういを抱きしめた。ういは抵抗もなくアズサの腕に捕らわれ、気にせずふにゃふにゃと笑っている。アズサはその顔に、目に、唇に触れていく。今まで離れていた時間を少しでも埋めるように、ういの存在を確かめる。
「んふふ、王子、甘えたなん?」
擽ったさで身をよじるういを身体で押さえつけ、唇を触れ合わせた。ういの吐息を飲むように舌を、口蓋を、粘膜をなぞっていく。ういの眠気とも甘えともとれる鼻にかかった声が心地よく、アズサは満足するまでういの口腔を蹂躙した。
アズサが唇を離せば破裂音とともに透明な糸が二人を繋ぎ、途切れた。ういの頬と目元は赤みを帯び、息を荒げる姿は目に毒だ。まあアズサがそうしたのだけども。
「んもー、おれきもちよーく寝てたんやけど」
「俺も眠い。疲れた」
「眠いお人がするキスじゃないで?」
「かわいいぞ」
「……王子、ほんま疲れてるんやねえ」
ういが何か言っている。腕の中、ういの体温と香りが安堵を誘う。うつらうつらと徐々に暗くなる視界と、背中に回された温もりに、アズサは逆らわずに眠りへと落ちていった。
「あれ、ほんまに寝たん?まあ、疲れてたもんなあ」
ういは眠ってしまったアズサを見る。激務ゆえに家にも帰れなかったのか、それともタイミングが合わなかったのかわからないが、ほぼ一か月ぶりの再会だった。
目元には隈があり、一か月前よりもやつれているように見える。それに帰宅してすぐにここへ向かったのか、アズサの匂いに加えて汗と砂埃の匂いがした。
そんなにも疲れていたのに、疲れていたからこそか。アズサのほうから求めるなんて
「ほんま、珍しい……」
触れあうことは多くない。仕事のこともあるし、大抵はういが求めてアズサが応えることが多い。けれど先ほどのキスは違う。アズサがういを求めたキスだ。そう思うだけで身体は震え、熱が籠し、抱きしめられているから逃げ場がない。アズサの体温と匂いにあおられるばかりだ。
これでどうして眠れようか。いっそ今犯してくれればよかったのに。軽くアズサを叩けど気持ちよさそうに眠るばかり。
「あーもう、恨むで王子。起きたらたっぷり付き合ってな」